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設立趣旨
創立趣意書
国運の興隆は国家社会に貢献する人材の育成、学術研究の発展の度合いに依存すること絶大であると言わなければなりません。
長い間の戦争と終戦後の混乱時期を経て十年、わが国の世相は全く戦前の姿を一変した感があります。戦争とこれに伴う国力の疲弊に
よって、その間、有為の青少年学徒はその内在する力を育成するの好機を逸し、学術、政治、経済その他あらゆる文化は正常な発展を阻まれ、あるいは偏頗な方向に歪められざるを得ない事情にあったことは、わが国将来の発展に正に憂慮すべき事態であると言わなければなりません。
今日漸くにして、わが国の社会、政治、経済、文化の情勢も恢復に向い、ある程度安定して来ましたものの一般的には戦前の事情に比して隔世の感があります。
多くの青少年は有為な人材たる素質を有し向学心に燃えながらも、主として経済的障碍のために、みすみす学業を中断しなければならない事例は数うるにいとまない有様であることは、われわれとして真に慚愧に堪えないものがあります。
その間、教育制度も大きな変革をみ、最高学府たる大学も全国的に配置されるに至って、一般的に教育程度が高められ、機会が均等にあたえられるようになったかに見受けられますが、実際的には明治以来の教育機関の中央集中はいまだ解消されず、地方大学の施設も、にわかに拡充し得ない現況のため、有為な青年の大半は東京周辺に就学するほかなく、親戚等を頼りうる少数者以外は重き経済負担に苦しみ、且つ恵まれぬ環境の下にあるのであります。一方、学問の道は深淵であり、いまや世界的レベルにおいて考えなければならないのであります。
将来わが国が世界に雄飛し、真に文化国家、平和国家として世界を指導するためには、まずこの道において立派な人材を養成することが、国家喫緊事と考えられます。
学問の道は決して安易な道ではありません。強固な基礎の上に不撓不屈の努力を続けることによってのみはじめて成し遂げられる道であります。一日も速く次代を担う青少年の中に人材を見い出し、やむをえない経済的障碍などがあるならば、われわれこそその障碍を除去する力ともなり、かれらをして後顧の憂なく一途勉学研鑽に邁進させねばならないと考えるものであります。
学問の道も、成長の段階に応じて時機を失せず適切に養うところがあってこそ、立派に成就されうるのであります。
ここに、われわれは本奨学会の設立を企図し、本会の事業を通じて、聊なりとも国家社会文化の向上に寄与せんと決意をいたしたものであります。昭和三十年十二月二日
財団法人 新日本奨学会
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